「先生…ありがと……」


ジワッと霞む視界の中、俯きながら先生にお礼を言おうとする私を先生はピアノのイスに引き寄せ、隣に座らせた。



そして、私の後頭部に手を回すと、チュッと軽く触れるキスをした。



「幸歩…、まだ泣くの早過ぎ。」


先生は涙が零れた私の頬を親指で優しく拭う。


そんなこと言われても…
やっぱり涙は出ちゃうよ…。


好きな人が私のために作ってくれた…


素敵な曲を目の前で聴いたんだもん…。