「先生…、もしかして家に帰ってないんですか…?」

先生のカバンが下に落ちているのに気付いた私は、ふとそんな質問をしていた。

「一真から連絡あって、幸歩に鍵渡したって聞いたから幸歩の家に行ったけど、いないからビックリした…。幸歩のお母さんも、どこに行ったか分からないって言うし、あれこれ考えるよりも先に体が動いて、この辺をずっと探し回ってた…。」



さっき息が荒かったのは、ずっと私を探してくれてたからなんだ…。


なのに私…



「先生…ごめんなさい…。」


「もういいよ。今、幸歩がちゃんと俺の腕の中にいるから。それで十分。」


先生は抱きしめながら、私の髪を優しく梳かしていた。