その音はあまりにも小さく、こっそり入ってきたみたいな奇妙な音だった。
少し気になったが、私はそのままハンチング帽子を深くかぶったままだった。
本当ならそのまま再びハンチング帽子を深くかぶり、うつむいたままでいようと思ったが、私の向かえの席に誰かが座ったので思わず顔をあげてしまった。
そこに座ったのは、どこにでもいるような男だった。
歳は私と同じくらい。
その男はいかにも私と知り合いであるかのように自然に私の向かえに座って私を見た。
少し寒気のようなものを感じながらも、私は口を開いた。
「他にも席たくさんありますけど、なんでここに座るんですか?私あなたと会ったことありましたっけ?」
少し間を置いて彼は口を開いた。
「君はずいぶん暗い色のものばかり持つんだね。」
彼はまるで私の質問は聞こえていないみたいだった。
「聞こえてます?私の言ったこと。」
彼は私のMDプレーヤーに目をやり少し指でなぞった。
「耳はいい方だよ。でも君の身につけてる物の方が気になってね。君名前なんて言うの?」
変わったナンパだなと思うながらも私は彼の返事に答えた。
「茜よ。」
ずいぶん君に似合わない名前だと言いながらその男は笑った。
余計なお世話だと思ったが特に何も言わないでおいた。
「俺は由紀。ここによくくるから。君もまたおいで。今日は用事があるからまたね。」
そう言ってまた私の目をじっと見て由紀去っていった。
少し気になったが、私はそのままハンチング帽子を深くかぶったままだった。
本当ならそのまま再びハンチング帽子を深くかぶり、うつむいたままでいようと思ったが、私の向かえの席に誰かが座ったので思わず顔をあげてしまった。
そこに座ったのは、どこにでもいるような男だった。
歳は私と同じくらい。
その男はいかにも私と知り合いであるかのように自然に私の向かえに座って私を見た。
少し寒気のようなものを感じながらも、私は口を開いた。
「他にも席たくさんありますけど、なんでここに座るんですか?私あなたと会ったことありましたっけ?」
少し間を置いて彼は口を開いた。
「君はずいぶん暗い色のものばかり持つんだね。」
彼はまるで私の質問は聞こえていないみたいだった。
「聞こえてます?私の言ったこと。」
彼は私のMDプレーヤーに目をやり少し指でなぞった。
「耳はいい方だよ。でも君の身につけてる物の方が気になってね。君名前なんて言うの?」
変わったナンパだなと思うながらも私は彼の返事に答えた。
「茜よ。」
ずいぶん君に似合わない名前だと言いながらその男は笑った。
余計なお世話だと思ったが特に何も言わないでおいた。
「俺は由紀。ここによくくるから。君もまたおいで。今日は用事があるからまたね。」
そう言ってまた私の目をじっと見て由紀去っていった。