少しずつ近付いて来る足音に緊張感を覚えながら、ゆっくりと立ち上がった。


その瞬間、目の前の階段を上がって来る虹希さんの姿が視界に入って来た。


「紫ちゃん……」


階段の途中であたしに気付いた彼は、目を見開いて立ち止まった。


あたしは、小さく息を吐いてから微笑んだ。


「おかえりなさい」


「……ここで何してるの?」


ため息混じりに訊いた虹希さんは、不機嫌そうに眉をしかめながら階段を上がって来ると、あたしの前で足を止めた。