「僕はこの図書室の特性を活かして君を覗いていた」
僕の学校は、増設された図書室だけが飛び出しており、屋根がついている。
どうやらその屋根に登り上から僕を見ていたらしい。
「…って、お前ストーカーとかそういう感じ!?」
「…どうとでも。だって君にとって僕は不審人物極まりない存在に違いないだろうから」
ニコ、と笑い暫定ストーカー少年は僕の足から段々上に視線を上げていった。
違うと信じたいが品定めされている気分で、あまり楽しいものじゃない。
「──…じゃあ、名前は?」
僕が質問を変えると、彼は窓を蹴って僕に背中を見せた状態で地面に降り立ち綺麗に振り向いた。
「空幸」
「そゆき?」
「──アイン、幸、栞、存守、刻乃、風波、流、真空、旦、美波、雫、祈幸、釦…好きなのを選んで。本当の名前は無い」
僕は口を開け放ってしまった。
こんなに冗談みたいに名前のある奴が居るか、と。
「因みに」
「何だよ」
「…唯一気に入ってるのは、釦」
どうやらこの名前たちは自分で付けたものではないらしい。
──「本当の名前は無い。」