そう、風が吹いた時。

空から少年が降って来た。




小説などではよく聞くベタな話なのだが、さすがに予想だにしてない事件事故にはやはり人は驚くものだ。

とはいえ、人は重力に反して飛んだのではなく、重力に従って落ちてきたのだから、不思議とそこまで可笑しな話ではない。





長く語ってしまったが、時はほんの五分ほど遡る。



篠木怜。
基本何にでも真剣。
適度に力を抜きつつも、結構頑張っている方だ。

そんな僕が誰も居ない図書室の窓際で本を読んでいた時のことだった。
辛うじて視界に入っていた窓の外の変わらぬ世界の中を、

1つの影が縦に走り抜ける。

「…は?」


──自殺?
不自然なこの状況でふと僕が感じたのはその可能性だった。
自殺率、95%前後。
そう考えた僕にとって、窓の外を見るという日常的には何でも無い行為が、一生のトラウマになるかも知れないと判断する。

考えてもみて欲しい。

血溜まり。
その中に制服。
その中にさっきまでの、

同級生がこの世に存在しないモノと化している。


そんな光景を誰が見たいだろうか。

「まぁいっか…」

何がいいんだ。
僕は自分で突っ込みを入れながらも窓に近付いた。