その音から数秒、誰かの手によって開いた扉の先に居たのは、

「ぼ──…釦?」

だった。

「嫌だな、脅しのつもり?馬っ鹿じゃないの」

軽く罵倒された小林は拳銃を釦に向け直した。
釦はというと、無謀だとは思うのだが(これは僕の感情だ)、細い右腕を小林に向け、拳銃の象を指で作ると綺麗に微笑む。

「今なら指一本で君を殺せる気がするよ」

──いや、それは無理だろ。…ていうか今殺せるって言われたの僕じゃないよな?

バン、と撃つ真似をして楽しげに笑う釦に、小林は汗を滲ませていた。

──え、何?本当に指一本で人殺せちゃうの?

「君が僕のことを殺せないこと位とっくの昔に知ってる」
         ・・・・
「今はどうだかな、死亡者X」

小林の言葉に釦が笑顔を消す。
死亡者Xとは何なのかなんて僕に簡単に想像出来ることじゃない。
この目の前の二人のみが理解しうる言葉なのだ。

「…虫酸が走るな」

僕は(多分)関係ないのに、其処から動けないような感覚に陥った。
それ程、釦の不機嫌さ及び怒りが空気を震わせたのだ。

「その仇名、止めてくれない?」