阿呆みたいに反復しても、ちっとも頭には叩き込まれない。
僕はかぶりを振った。
「──それは自分の息子にも言えることだった」
「息子…って」
今話題にされているのは僕の母親なのだから、その息子は当然僕だ。
「そう、君だよ、伶」
「…何言ってんのか全く判んないけどさ、」
小林は僕に変な──変としか言いようがないのだ──笑顔を向けた。
「僕は自分の母親なんて知らないし、いきなり生物学ぽい話されたって判んないんだ!」
「───」
わざと隠すような語り方をして、知らなかった母親を教えられて。
「僕に、何を求めてるんだよ!」
僕の本日二度目の大きな声は、寒々しいこの空間に反響して、耳の奥に残った。
だから、僕は耳を擦る。自分の声なんてそうそう聞きたいもんじゃない。
小林は笑顔を崩さぬまま僕に近付いて、大量のファイルを入れた紙袋を、
ゴトン、
と僕の足元に重く落とすが如く置いた。
「何──」
「自分で確かめれば良い」
「は?」
「自分の母親のしたことを、自分で確かめてから死に行けばいい」
──あ、デジャヴ。
僕の半分壊れた脳は勝手にそういうことを考える。