重い体をどうして動かせたのか。
「なんでアンタが僕の名前知ってんだよ!!」
僕はそいつに掴みかかった。
「──なん…」
親に掴みかかる機会も無かった僕にとって、それは何とも言えない苦しさを伴うことを知る。
──途方もない反抗の精神を。
「キッツ…」
僕は手を離す。
・・・・・・
相手は恰も僕がそうすることを知っていたかのように余裕を振り撒いていた。
僕のせりあがる悔しさはもうどうすることも出来ずに、膝を折ってその場に崩れた。
「優しいところはそっくりだ」
「誰…とだよ」
「君の母親はね、伶」
母親…。
「──…」
「とても美しく残酷な人間だった」
その言葉に手を握り締める。
悔しいとかではなく、只怖かった。
自分の知らない自分の母親。それを自分の知らない人間が語り始める。
変な光景だ。