「こぉん・ばんわー。わぁ~、
ホンとだあ、イメージ通り!」

「さっ、こっちこっち。」

「えっ、Judeさん??」


キャッキャッ♪しながら
カマっぽい乙女属科の店員
約二名が内股の小走りで
戸惑う彼女の背中を押して
奥へと連れ去って行った。



「試着したらちゃんと俺に
見せに来るんだよ? いいね?」



「「 オッケーぃ。」」



お前らが返事すんのかよッ。

アキバ系店員しかいない
この店。

来る度に新しい種族(店員)を
発見したりする、とても
興味深いブティックだった。

しかし、彼らに任せれば
大概のものは揃えてくれるし
オリジナル・ブランドも
あったりして
意外にセンスのいい店だ。



「ほらぁ~カワイイー!」

「・・・。」



待っていたテーブルに
出されたコーヒーを手に
固まっちまった。


また背中を押されて
戻って来たシア。

普通に立っているだけなのに、
居残っていた店員達も
言葉を失っている。

この店、独特のデザインの
サロペットワンピを着た彼女。

バカな・・!

"萌エ"しか頭に浮かばない!?


アンニュイな目、鼻、唇。

この彼女がこのまま
フィギィアになったら
俺が"ヨメ"にするぜ・・・!!


てか、周りは既に店員らの
お経の様な"萌エ"の嵐だった。

(羊かヤギの群れみたいな)


チッ、乗り遅れたか・・!

いやいや。



「 次。」



ひとつ冷静に
行こうじゃないか。

万が一思っても、
俺の口からけしてそんな事
云ってはならぬ。

・・むずむずする。

ヴィジュアル系にだって
オタクは多いんだ。

ストレスが溜まっちまう。



「じゃ、コレ全部貰うよ。」

「毎度ありーんっ。」



ちょっと買い過ぎかなと
思ったけど、ダメだ。
どれも外せない・・

・・・モエた。

それに迷っているより、
早めに退散したくなっていた。

さすがの俺もこの異様な
試着会の光景に退いてしまう。