「・・これからドコへ?」


少し振り向いた不安気な顔で
彼女は俺に訊ねる。


「買い物かな・・。
それから、ゴハンにしよう。」


本当は今日これから、
自分へのご褒美に
服を買おうと思ってたが
予定変更だ。

彼女を見てイメージが沸くと
即行く店を決め、
携帯を取り出している。

その格好では硬すぎる。
ちょっと
イメチェンさせてみよう。



「テーマは"過ぎない甘さ"、
イメージは花屋の売り子かな。
黒かチョコで10ほど頼める?」

「・・・?」




ぴ!   

ばかっ。



携帯を閉じると不思議そうに
見つめてる彼女を他所に、

シート下から
小さめのバッグを取り出して
膝の上で開けた。

中の鏡を見ながらご機嫌な
素振りで口笛を吹いて。

取出したたる"モミ上げ"を
左右に貼り付け足して
サングラスから眼鏡に変え、
ニット・キャップを被って
出来上がり。

買い物に変装は付き物である。
やる時はとことんやるのが
俺のモットーだ。



「俺ってイイ男・・?」

「ふふっ。」

「・・・・・。」



その時、マジックでも見た
子供みたいに目を輝かせて
彼女が笑ったんだ。

そんな風に笑う事、
忘れた訳じゃない・・
ヤツが忘れさせただけ
じゃないのか?

白状すると・・少々、
トキメキを感じてしまった。

咳払いしながら足を組み直し、
いつもの俺に戻ろうとする。

俺の好みは
クール・ビューティだ。

まあ、
背が低いと云うだけで・・
近い雰囲気はあるかな?


( でも、まだガキじゃん )


イカンイカン。

俺はいつだってクールで
エキセントリックで
なくっちゃあ・・いけない。


だがこのアト、
ジレンマを抱え込もうとは。



・・ブティックはもう
シャッターが半分下りていた。

目の前に車を止め、
彼女を連れて店内に入る。



「いらっしゃ~い、お待ち
してま・し・た! ウフッ。」



吉本の藤井似の店長がクネクネ、
両手の指を前で組みニコヤカに
"オネエ"丸出しのお辞儀をした。