「そういえば、ここへくる途中、銀の髪をしたやたらきれいな男を見たんだが…お前の知り合いか?」



ベンチへ座るなりそう話し始めた兄に、カイは一瞬どう話したものかと迷った。


しかし、まだ自分の中でも消化できていないものを話すのは気が進まなかったし、話すとなれば自然とマリーのことにも触れなければならなかったため、なぜか話す気になれなかった。


カイは、そんな自分を苦く思いながらも、一領主として身につけたポーカーフェイスを保ったまま、



「いえ?この広場ですれ違ったのは覚えていますが、きっと避難してきた者でしょう。」



と、返答した。


そんなカイに何を感じたのか、一瞬目を眇めた兄に、内心を見破られたような気がしたカイだったが、何食わぬ顔で兄を見返す。


それに対し、ふっと笑って流した兄に安堵しつつ、気になっていたことを聞いた。