シリウスが去った後、カイは一人まだ広場にたたずんでいた。


今日ほど自分が驚いた日はなかったような気がする。


それほど、シリウスの口から語られた話はカイに衝撃を与えた。


王族である自分が、まったく知らなかったあの話を、兄は知っているのだろうか。


いや、知っているのだろう。


王である兄が知らないはずはない。あの飄々とした兄は、知らないことはないのではないのかというくらい様々なことを知っているし、ましてや国に関わってくる話を知らないなどということはありえないだろう。


広場には、カイの影が伸びている。そろそろ日が傾いてきた。


徐々に赤くなっていく日に照らされた広場に、もう一つの影が加わったのは、それから間もなくであった。