「な…なんなの一体」



突然現れては突然去る。神出鬼没の男に、マリーは二度と会いたくないと思った。


一方、男の方は、楽しそうな笑みを浮かべながら坂道を登っていく。



「さあて、久しぶりに弟の顔でも見に行くかな」



ふんふんと先ほどマリーが鼻歌で歌っていたものを口ずさみながら、坂道を登っていく男は、途中で銀髪の男とすれ違う。


お互いに顔も見たことがないもの同士。本来であれば何事もなくすれ違うはずであった。


しかし…


お互いに足をぴたりと止め、後ろを振り向く。



「やあ、こんにちは」

「ええ、どうも」



たったそれだけの言葉を交わし、じっと互いの目を見つめあった男たちは、どちらが先か、ふっと目をそらし、唇にのせた笑みを保ったまま別れた。