「帝国軍が…?それは確かなのか?」



唯一広場にあるベンチに座り、自分たちが帝国軍に追われていたことをカイに話したマリーは、確かにお師匠様があの不気味な黒兜の男を「帝国の第三皇子」と呼んでいたことを思い出し、こくりと頷いた。



「そうか…」



そう呟きながら考え込むカイに、マリーはまだ話していないことがあった。


なぜ自分とお師匠様のことを王子・王女と呼んだのか。まだお師匠様に話を聞いていない以上、うかつには話せなかった。



「しかし、お前のお師匠様とやらは、相当の腕前を持っているんだな」

「さあ…私には剣のことはよくわからないし。それに、あの日が初めてだったの。お師匠様が剣を振るう姿を見たのは」



話がお師匠様の話に及び、マリーはほっとした。自分にも分からないことだらけの話を続けるのは、どこか苦痛だったからだ。



「会ってみたいものだ。お前のお師匠様に」



そういって笑うカイに、「私はここに」とお師匠様の声が響いたのに、驚いたのはマリーだった。