「ここは、かの東王も好きな場所だったらしい」



そうぽつりと呟いたカイをマリーはまじまじと見た。


「かの王弟は、ここで何を見たんだろうな…」



そう言うカイの目には、陰欝な色が映っていた。


マリーのカイに対する印象は、力に溢れたもの。


その瞳は最もカイらしさを表していたから、そんな風に瞳を曇らせることにマリーは驚いた。



「…カイ」

「ああ…いや、ごめん。…それで、マリーはどうしてこの城に?」



話をするりと逸らされたことは分かったが、まだ出会って間もない自分に、その心を完全には開けないのは当たり前。


そう思い、マリーは今までの経緯をカイに語ることにした。