「マリー」



そうカイの静かな声をかけられ、つい先程まで険しい道を登ることしか考えていなかったマリーは、とっさの言葉が出てこない。



「え…と。う…あ…」



ただでさえ気持ちをかき乱すカイの突然の登場に、マリーはその大きな瞳を見開いて口をパクパクさせていた。


その様子をおもしろげに見ていたカイは、ふと今までマリーが登って行こうとしていた斜面に気が付いた。


「マリー?こんなところで何を…?」



マリーと斜面を見比べるようにして尋ねてくるカイに対して、さらに恥ずかしさを募らせたマリーは上手く説明できない。



「あの…斜面が消えたら光がぱっとなって…それで…街が下にあって…」



自分でも何をしゃべっているのか分からない。


もうやだ…


どんどん声が小さくなっていくマリーは、恥ずかしくてカイを見ることができなかった。