カイ…あれはカイだよね?

漆黒の髪、深い青の瞳。間違えようがない。


しかし…


なぜカイがここに?ううん、それよりもなぜ皆がカイに頭を下げるの?


王弟に頭を下げるのは当たり前だったが、マリーはカイが王弟であることは知らない。


あんな風に頭を下げられるのは偉い人だからだ…


世間知らずの自分でも、その程度のことはわかる。


あの日の一瞬の出会い。それでもあの日はとても近く感じられたその存在が、今はひどく遠くに感じた。


さっと手を上げ頭を上げるよう指示したカイは、側近とともに食堂へと進み出る。


その姿はとても堂々たるもので、マリーはなぜだか泣きそうになった。


きゅっとシリウスの服の裾をつかみ食い入るように王弟を見るマリーを、シリウスは複雑な思いで見ていた。