「あなたは?」

「ん?」

「あなたの名前は何ですか?」



反撃とばかりに尋ねてくるマリーに、男はにやりと笑いかける。



「それは後で分かると思うけど」

「あ、そうやって自分だけ教えないなんてズルいです!」


すでに警戒心なくぷりぷり怒っているマリーをおもしろく思いながら、男はすっと街の向こうに目をやった。



「そろそろ…かな」

「え?」

「ううん、なんでもないよ」



一瞬鋭い目をした男はみまちがいだったのか…


マリーは内心首を傾げたが、これ以上この人に聞いても何も答えてくれないだろうな…と思い、あきらめた。