しばし馬に揺られ、着いた先に見た城は、マリーが想像していたものと少し…いや、大分異なっていた。


山に沿うように立てられた城は、それ自体がまるで山のようで、壅塞のようであった。灰色の壁は冷たさを見るものに与え、敵の襲撃があっても幾日も持ちこたえるであろう堅牢なものであった。


シリウスの目には、立派な城に映ったが、御伽噺のような城を想像していたマリーは、落胆を隠せなかった。


マリーの考えていることが手に取るように分かるシリウスは苦笑しつつ、馬を下りて門番の下へと駆け寄った。


そしていくつか確認し、自らの妄想を打ち砕かれ、しおれているマリーの元へと戻った。



「やはり街の住人は避難しているらしい。」


シリウスはマリーにそう伝え、門の方へと馬をすすめる。



「どこに行くんです?」



マリーの至極当然な質問に対し、シリウスはにっと笑い、指を指した。



マリーには灰色の塊にしか見えない、城を。