第48代アルヌス国王である、カルサス・ランティス・ド・アルヌスは、カイの愛すべき兄であると同時に、こちらもまた聖王の再来とうたわれる賢王であった。


カルサス(光)という名の通り、カイとは真逆の光り輝く金の髪を持つ兄は、その美貌もあいまって、国民の人気を得ていた。

本人もそれが分かっていたため、国民の望むままに演じているというしたたかさも持ってはいたが、賢王であるということには変わりなく、また、自分にとっても本音で話せる貴重な相手であった。



二人きりのときは臣下の態度を許さない兄もまた、自分がそういう相手だと思っている…

その信頼から、兄弟仲は国王と臣下となった今でも良好に保たれていた。





西王と東王。




二つの絶対たる王を戴くアルヌスは、大国ギュデス、アウザー帝国と隣接する三大国の一つであることから、常に危険にさらされているといってもいいが、ギュデスとは同盟関係にあるため、実質的には帝国がその危険の対象であるといってよかった。




そして闘王がかつて帝国軍を撃破したように、自分もまたそれが求められている。



いつも冷静でめったに表情を崩さない…一部の兵士からは氷の王と呼ばれる自分が、内心はさまざまな葛藤を抱えていることを知っているのは兄ぐらいだろう。




そう考えつつも、カイはいつもの自分らしく、冷静に現状を把握することに努めることにした。