王弟カイ・イルバ・アルヌスは、優秀な武人として有名であった。


そのカイが、今はため息を禁じえなかった。


とうとう帝国とぶつかることとなる…

いったいどれだけの兵士が犠牲になるのか…


優れた武人であるからといって、戦うことが好きなわけではない。



昨日報告された情報は、カイを憂鬱にさせるだけの十分な効果を発揮したようであった。





カイは、その漆黒の髪と青い瞳が、かの闘王と同じであり、自身もまた優秀な武人であることから、闘王の再来であるともてはやされていた。



しかし本人はそのような周囲の評価は全くといっていいほど耳にとめていなかった。




また、しなやかな筋肉がついた体躯は、カイの容貌を際立たせており、国民からは漆黒の貴公子としてもてはやされていたが、そんな評判もどうでもよかった。



考えるのは、自国が平和に、そして兄である国王が治めやすくなるように・・・


それだけであった。