しかたない…


「マリー?…マリエルっ!」



そう呼び掛けたとたん、マリーははっとシリウスが帰っていることに気付いた。


「お師匠様…あ、今日はお早いんですね…」




そう気まずげに話すマリーに、シリウスはにこやかにいった。



「今日は珍しく早く片付いたんだ」



マリーがぼうっとしていたことに触れなかったシリウスだったが、真名を呼ばなければ気付かないマリーになにか心の晴れないものを感じた。



「あ、夕食の準備しますね!」




そういってくるくると動き出したマリーを見ながら、シリウスはそのきれいに尖った顎に手をかけ、



ふむ…



と考え込んだ。