「杏樹、よかったね」
「え?なにが?」
話が突然飛んで、軽く焦るあたし。
「冬矢翡翠に目をつけられたら何されるか分からないからね。
さっき、ユアン君が杏樹を連れ出したのも、冬矢翡翠が杏樹のこと見てたからでしょ?」
由里亜はニコリとユアンに笑いかけた。
「アイツは…何か関わらない方がいい気がして」
「さすがユアン君!!!
やっぱかっこいい!!」
ここで深刻な話は終わったらしく、テンションが一気に上がった由里亜。
ユアンもフゥと一息つくと態勢を崩す。
「とにかく、あの2人には近付かない方がいいから。分からないことあればまたあたしが教えてあげるーっ」
「ありがとうございます由里亜さん」
「あたしに敬語使わなくていーよっあと“さん“付けもいらないから」
「えっ…あ…えっと」
「やだーユアン君照れてんの!?カワイイんだけどーっ」
由里亜と、由里亜に遊ばれているユアンをほって置いて
あたしは窓を開けた。
「…………寒いっ」
5月といえど夜はまだまだ肌寒い。
遠くの方で、ネオンがキラキラ輝いている。
ラスベガスの夜も綺麗だったなぁなんて思いながら、
袖をきゅっと握って
あたしは空を見上げた。
とりあえず、パパに米を送らなきゃ。