「……ん?」
手で体をパタパタと扇いでいた渉は、しゃがんで渉を見上げるあたしの髪に、その指先をスッとからめる。
普段だったら「触らないで!!」とか言うんだけど、あたしの頭はそれどころじゃない。
「…お願いがあって」
「お願い?」
渉の言葉に、なんとなく落ち着かなくなって視線をさ迷わせてしまう。
何せこの超鬼畜いじめっ子隣人にお願いごとをするなんて、多分人生で初めてのこと。
緊張しないわけないけど、ここは行くしかない。
あたしは一気に渉に視線を合わせた。
「あ、明日のリボン可愛いのにして下さい!!!」
「何で?」
………………え?
まさか即答で理由を聞かれるなんて思っていなかったあたしは、渉をポカンと見上げてしまった。
渉は目線を変えずにあたしを捉えたままで
あたしの髪を撫でていた手をあたしのこめかみに当てると、親指であたしの頬をなぞる。
その目は、その手は、間違いなく早く理由を言えよと言っている。
「えと…」
一瞬戸惑ったけれど、ここで理由を言わなければ渉が何するかわからないので、あたしはゆっくり口を開く。
「…明日から図書当番があるから」
その瞬間、渉があたしの髪をギュッと握りしめてきた。