でも、そんなの気にならないくらい今のあたしは榊原君に夢中で。
「えっと、あたしに何か用だった?」
ポカポカと高揚する気分を隠せない。
「ん。俺のクラスの図書委員が明日から2週間帰りの当番出られなくてさ…」
「あっ香子ちゃんのことだよね!!香子ちゃんから聞いてるよ。明日からあたしが香子ちゃんの代わりに当番やればいいんだよね!!」
「うん。なんかわざわざゴメンね。ちがうクラスなのに」
「ぜんぜんっ!!あたし暇だし大丈夫だよ」
へへっと笑えば榊原君は目を柔らかく細めて微笑んでくれた。
太陽の光が榊原君に当たっていて、彼だけがこの空間で輝いているように見える。
「じゃ、よろしくね」
「…………っ!!!!」
榊原君はあたしの頬をゆっくり撫でると、颯爽と去ってしまった。
「………若菜」
「………………」
「……若菜っ!!!!」
「………………」
隣で渉が呆れたように頭を抱えるのを視界の端でとらえながら、
先程榊原君に触れられた頬に手を当てて、あたしは幸せの余韻に浸っていた。