「あたしはっ…!!!!」
「おはよう蒼井さん」
今まで溜め込んできた怒りが一気に爆発したかのように声を上げるあたしを、突如遮った声。
渉もあたしも声のした方に頭を向けると
「…あれ?ちょっと邪魔だったかな俺」
「さ…さっ…榊原君!!!」
容姿端麗、成績優秀、性格温厚
まさに漫画の世界にしか存在しないような完璧な王子様、
榊原冬真君が少しはにかんだように立っていた。
「えっ…あの…んと」
突然現れた学園の王子様に、あたしの渉に対する怒りは一瞬のうちに消え去り
先程とは違った意味で顔が熱を持ちはじめる。
心臓の心拍数が増えて、何だか体全体もほかほかしてきた。
ああ…生の榊原君だ…
榊原君の整った顔を直視できなくて、あたしは無意識に目線を下げる。
「ごっ…ゴメンね!!榊原君。邪魔とかそんなんじゃないから!!」
「そっか。向こうからだと蒼井さんしか見えなかったから」
ああ榊原君っ!!!その曖昧に伸ばした人差し指が素敵ですっ!!!!
あたしがとろんと榊原君を見ていると、渉があたしを気持ち悪いモノを見るような目で見てきた。