「この味噌汁は、今は亡き母がよく私に作ってくれていた味噌汁です」


別にお母さんの話に同情させて評価を貰う気はない。



それに、

お袋の味=味噌汁


なんて、常識で普通かもしれない。


だけど私が聞いてほしいのは・・その後。



「私は今、ある家族の方々と一緒に住んでます。その家族の方々は、両親を亡くし身寄りがない私を屋敷においてくれました。

最初はすっごく嫌で、家族でもない人達と暮らすなんてあり得ませんでした。

喧嘩、喧嘩の毎日で何でこんな所に居るのかさえ分からなくなりました。

お金持ちだか何だか知らないけど、食べる物は皆高級食材を使った料理。買うものだって高価な物ばかり。

正直、金持ちなんて嫌いでした。

そんなある日・・その家に来て、初めて夕食で"一般家庭にある味噌汁"が出てきました。

それがこの"豆腐とワカメの味噌汁"でした。

正直驚きました。こんな屋敷で味噌汁が出てくるなんて!!と・・それに、亡き母が作ってくれた味噌汁と全く同じ具材の味噌汁。

そして、これを作ってくれた方は言いました。

"お前の家ではこんなの作ってたんだろ??お袋さんの味に近付けるかわかんねーけど、食べろ"と。

その時の言葉で、溜まってた分の涙が溢れ出てきました。

そこから、私の思い出の料理はこの"味噌汁"になりました。

今でもよく作って貰ってます!!!!」



それを作ってくれたのは李斗さん。


李斗も少しビックリした顔で柚姫を見ていた