「でも、僕は負けたほうがよかったと思う」


「そうだね、あのまま行けば"井の中の蛙"になっていただろうからね」


やっぱり伊織もわかってたんだ。


「でも、それとこれは話が別!」


「う?」


「アイツの相手するのはすんごい疲れるんだよ!!」


拳を握りしめ力説された……


「……そうですか」


「そうなんです!!」


僕、すごいおされぎみ……?


話ながら歩いていたから訓練場に到着した。


「さて、それじゃあ準備しようか」


「はい」


と言っても僕は補助だから先輩ほど準備に時間はかからない。


僕たちは魔法を使うから精神統一してる人とかはいるけど。


今更僕には必要ない。


祈る神も居ないんだし……


祈るとすれば、利都…家族か…


また、余計なこと考えちゃった…


この癖どうにかしないとな。


度々考え込んでいる利都を伊織が黙って心配そうに見ていることを本人は知らない。


先輩は、と。


僕は準備していた先輩の方を見た。


「伊織準備できた?」


「オッケーだよ」


ついさっきまでの顔が嘘のようないつもの笑顔で伊織は返事をした。