「伊織、遅い。本当に授業に遅れる」


「ごめんね。まぁ篠原には悪いけど、負ける気はしないよ」


「今まで負けたことないの?」


「そう、篠原も強いんだけど勝つことに夢中になるとそれに一直線だから」


ちょっと呆れぎみに伊織は話を進める。


「コンビプレイが疎かになるから隙ができやすいんだ」


「あぁ、だから勝てた試しがないと……」


「そっ」


コンビの場合一人強くたって意味は無い。


一人で二人に勝つのは難しいのだから。


「真木大丈夫かな?」


先輩の話を聞いて心配になってきた。


「大丈夫だよ。普段は偉そうにしてても冷静だから」


よかった。


ん?ちょっとまてよ……


「伊織の場合のみ暴走するの?」


「そうなんだよねぇ」


先輩は仕方がないと言うよう篠原先輩のことを話はじめた。


「それは俺が3年生の時」


「篠原は当時組んでた先輩と負け知らずで有名だったんだ。


そんなある日オレがいるペアとあたってあっさりアイツのペアが負けたんだ。


それ以来オレに勝つことに執着しはじめたんだ。


よっぽど悔しかったんだろうな」


先輩は簡単にことの成りゆきを教えてくれた。