「菜穂子、いこっか」
野球部達はこの後、バスで学校へ戻る。
彩夏たちも学校に行くことにした。
きっと菜穂子は悠馬君に会いたいだろう。

「学校つくまでにその顔どうにかしやなあかんな。悠馬君にふられちゃうで(笑)」
「うん…(笑)」
奈美恵は苦笑いして頷いた。

スタンドを出ようとしたとき、1人の男の子が彩夏の目に止まった。男の子は坊主頭で、同い年くらいに見える。

彼は、泣いていた。

別に大泣きしてるわけでも、泣き崩れているわけでもないのに、なんだかほっとけなくて、あたしは持っていたハンカチを彼に差し出した。

「これ、よかったら…」
差し出されたハンカチを見て、彼はパッと顔を上げてあたしを見た。
「あ、ども。…すいません(笑)」
「じゃ。」
その場に居るのもなんだか気まずくて、あたしは立ち去った。