一瞬の出来事なのに、凄く凄く長い時間に思えた。



私はこの4階の窓ガラスの内側で、何も出来ず見てる事しか出来なかった。



好きな人の見たくない光景。


「でも、したか分んないよ今のじゃ。」



ショックを受けている私に、友來が肩にポンっと手を置いて言う。



「うん…。
でもぉ……。」



何故か半泣きな私を、友來が"大丈夫だって"って言いながら抱き締めて頭をナゼナゼしてくれた。



確かに…今のは、したかどうか分からない。


目に焼き付いた光景が、頭の中で何度もリピート再生してる。



ほんの一瞬の出来事。



近付く女子の顔

彰の唇に振れちゃう様な位置まで近付いた時


彰は、その女子の身体を 首に巻かれた腕を振りほどいた。


一瞬俯いた女子。


直ぐに顔を上げて、彰に何か言って

なんにも無かった様に、笑顔で彰の前から去って行った。

一瞬その子が上を見て、私と目が合った気がした。

私がここから見てるの、知ってたの?

だとしたら、そうとう感じ悪っ!



その場に立ち尽くす彰。



暫くしてもう一度顔を洗い、コートに戻って行った。