「あ、葉南…」

片岡君と目が合うと、すぐにバキッという痛々しい音が聞こえた

青いツナギを着ている男に、片岡君が殴られたのだ

「いってーな。何すんだよ」

片岡君が、キッと睨みつけると、殴った男に殴り返した

「ちょ…っと、喧嘩は良くないよぉ」

あたしは小声で、片岡君に呟いた

片岡君には聞こえてないみたいで、殴り合いは続いている

少し大き目な声で、片岡君を呼んでも、青族と喧嘩をしている片岡君の耳には届かないみたい


「喧嘩したら、別れるよ!」

あたしの叫び声に、片岡君の拳がぴたっと止まった

「イヤだ。それは困る」

片岡君の表情がいつものに戻ると、青いツナギを掴んでいる手をぱっと離した

片岡君に胸倉を掴まれていた男が、へなへなっと地面に倒れこんでいく

『族長…大丈夫っすか?』

青いツナギを着ている男たちが、片岡君の手から離れて地面にひれ伏した男の周りに輪を作った

「んー、さすがチョーっすね」

ケンケンが片岡君の肩をたたいた

「キレると、止まらないのは変わらないねえ」

透理さんが肩をすくめて笑った

「片岡君っ」

あたしの声に、片岡君の背筋がぴっと伸びた

「帰宅途中の人たちに、ちょっかいを出してたから…指導をしたっていうのかな? 迷惑行為をやめてもらおうと思って。葉南が店から出てくる前には終わる予定だったんだよね…それが、ちょっと長引いちゃって」

片岡君が人を殴って腫れた手の甲を、さすりながら言い訳をする

「なんでキレたの?」

「それはぁ…」

片岡君は言いにくそうに、視線をそらした