外の見える位置のテーブルにつくと、僕はじっと飲み屋の入り口を眺めた

手の中にある携帯に目を落とす

メール受信のマークはない

どうして葉南は、僕にメールをしてくれないのだろうか?

「ねえ、冷たくしないでよ。私、彼氏いるし。大丈夫よ」

女が、僕の隣に座ると、にっこりと笑った

「どこがどう、大丈夫なのか…僕にはよくわからないけど」

「だから、一度だけの関係っていうのかな? 今日限りってこと」

「そういうの好きじゃないんだよね」

「さっき飲み屋で一緒に出ていった子って、もしかして片岡君の恋人? なんか意外。もっと趣味がいいのかと思ってた。普通じゃん。モテるのに。なんで?」

「別に」

わからないなら、それでいいよ

僕は葉南がいればそれでいいし

誰かに認めてもらいたくて、葉南と付き合ってるわけじゃないんだ

「あ、また来たぁ」

女が、こわーいと甘い声を出しながら僕の腕に胸を押し当ててきた

僕の視界に、青いツナギを着ている男たちが目に入った

駅から降りて、帰宅を急ぐ男女を冷やかしては、バイクで歩行者の邪魔をしたり、タクシーやバスの運行を邪魔している

ついでに僕の視界も、邪魔している

あいつらのせいで、飲み屋の入り口が見えない

「うざっ」

僕はぼそっと吐き出した

「最近、ずっとなんだよねえ。帰るのが怖くなっちゃう。もうしばらくすると、赤いツナギを着ている人たちも来ちゃって、もう駅にいけないって感じ」

「なら、今のうちに帰ったほうがいいんじゃない?」

「ええ? だってもう青い人たちがいて怖いもん」

「あっそ」

篤樹も大変なんだな

僕の後を継いでから、もう2年が過ぎるのかあ

そろそろ青の良いようにさせてるのも、どうかと思うよ