「僕、少し休憩に入りますから。注文が入ったら、よろしくお願いします」

「うぃーっす」

片岡君が腰のエプロンを外すと、キッチンを出て行った

やっと休憩が取れるんだね、片岡君

御苦労さまです

あたしは心の中で、片岡君にむかって呟いていた

「ああ、かったりぃ」

背後から、ぼそっと声が聞こえてくる

振り返ると、寺島君がかわいた食器を手に持って片づけていた

「あ、今夜なんだけどさ。俺も車で来たから、二台で移動な」

「そのことなんだけど…やっぱ、行かないよ」

あたしは首を横に振った

「マジで? 困るんだけど。加藤、もう近くに来てるし、茉莉も一緒に待ってるけど?」

『茉莉』ねえ

一昨日まで、『宮川さん』って言ってたのに

もう隠すつもりもないってこと?

「バイトが終わってからって…」

「…てか、茉莉にメールしただろ? 付き合うってさ。だから、加藤が喜んで、来ちゃったんだよ」

「は? あたし、そんなこと言ってないよ」