寺島君がバイトに来たのは8時少し前だった

クリスマスで、そんなにお客さんが来なかったから片岡君一人でキッチンがどうにかなっていたけれど

ちょっと無責任すぎるよ、寺島君

「ちーっす」

茶髪の髪をかき乱しながら、キッチンに入ってきた

首元が若干黒ずんでいる厨房の制服を着て、寺島君が入ってきた

遅れてきた挨拶もなく、寺島君は流しにいるあたしの横に並んだ

「俺、やるから」

煙草の臭いと一緒に、茉莉がいつもつけている香水の匂いが、あたしの耳をくすぐった

あ…さっきまで茉莉と一緒にいたんだ

茉莉と居て、バイトに遅れたんだ

もうほとんど洗い終わった皿から、あたしは離れる

「鈴木さん、ありがとうございました」

まな板の上で梅しそ巻きを作っていた片岡君がお礼を言ってくれる

「あ、いえ。平気ですから」

あたしはぺこぺこと頭を下げながら、キッチンを出ていき、ホールに戻った

「やっと来たね。この前のバイトの日も、無断でサボったんだよねえ。片岡君、休みの日だったのに、店長に呼び出されちゃって可哀そうだったよ」

一緒に組んでいた大澤さんが小声で言ってきた

ええ? 寺島君って、しょっちゅうサボってるの?