5時から、あたしはホールのほうのバイトに入った

6時から2人体制になる予定で、今はホールに一人

キッチンも片岡君一人だけだった

お客さんは店内に一人もいない

「鈴木さん、来月のシフトのコピーができたんで、そっちに貼っておいてもらえますか?」

A4サイズの紙が2枚、片岡君に手渡された

片岡君は、栗山さんのバイトが終わる前までシフトを仕上げてくれた

料理の合間や、仕込みの合間にちょっとずつシフトを書きこんでいき、平等にかつ、予定のある人の都合を考えて作ってくれた

あたしはただ汚れた食器を洗っているだけで、何の役にも立てずに、キッチンの仕事を終えたというのに

片岡君はすごい

年下とは思えないほどの手際の良さに感服した

あたしはお客様から見えない位置に、シフトを張り出すとじーっと来月のシフトを見つめた

「都合の悪い日がありましたか?」

「ううん、すごいなあって思って」

「凄くないですよ。都合の悪い日は前もって提出してもらってるんで、あとはバイトのコマにどんどんと入れていくだけですから」

「それが凄いんだよ」

片岡君は恥ずかしそうにはにかんだ

「あ、そうだった。お礼を言うのを忘れてた。ありがとう、靴、直してくれて」

「いえ、気にしないでください」

「お金は?」

「いりませんよ。ダチにやってもらっただけですから」

「本当にありがとう」

片岡君は笑顔で首を横に振った