「声、出ないでしょ? 恐怖心が出たら、人は声なんか出せない」

片岡君の意見に、あたしは深々と頷く

「一番、いいのは気分を変えることだよ。恐怖心を忘れるのが一番いいと僕は思うよ」

「そうだね」

「だから、また怖い思いをしたら、バイトしに来なよ」

「え? ただ働き?」

「もちろん。僕がバイトに入ってたら、ジュースくらいは出せるけど」

「サワーは?」

「仕事中に?」

「だってあたしはバイト中じゃないもの」

「だーめ。バイトをしてもらうんだから、飲酒は駄目です」

「じゃあさ、仕事が終わったら、片岡君がお酒を奢るってのはどう?」

「僕は未成年です」

「片岡君は未成年でも、あたしは…ってあれ? あたしも未成年だ」

ふと、自分が19歳だったことを思い出す