乾いた笑い声とは裏腹に、頬に温かい涙が流れていくのがわかった

泣きたくないのに、勝手に涙が零れていく

「あ、あれ? おかしいな」

あたしは流れおちていく涙を、指で払う

それでも涙は次から次へと流れていった

「とりあえず靴、履いてください。僕は学校から持って帰ってきた運動靴があるんで、それを履きますから」

片岡君は、バイクの荷台から白の運動靴を出すと足を入れた

「あ、あとこれもどうぞ」

片岡君は制服のポケットに入れてあった缶のホットココアを差し出した

「え?」

「いつもホッカイロ代わりに入れてるんで」

片岡君はあたしの手にある靴の代わりにココアを置いた

ヒールの折れた靴は、片岡君のバイクの荷台の中にポンっと納まった

「寒いでしょ、今夜。ココアで手を温めるといいですよ」

片岡君は革靴を指でさして、『履いてください』と言わんばかりの顔をあたしに見せてきた

あたしは、ゆっくりと片岡君の皮靴の中に足をいれる

さっきまで片岡君が履いていた靴は、とても温かくて、冷え切っていたあたしの足を熱で包んでくれた