片岡君は自分の革靴を脱ぐと、あたしの前にそっと置いてくれた

「これ、使ってください」

「え? 悪いよ」

あたしは靴を持ってる手を振った

片岡君も首を横に振って、あたしの足に視線を落とした

「怪我しますよ」

「でも…片岡君の靴がなくなっちゃうし、あたしの家はすぐそこのマンションだから」

建物と建物の間から見える黒い箱のようなマンションを指さした

最上階の家の明かりがちらりと見えるだけだけど、家は近くにあるってわかってもらえるよね?

「まだ歩くじゃないですか」

「あ…でも5,6分の距離だよ
ホント、今日はツイてなくて、ヒールは折れちゃうし、クリスマスなのに、失恋しちゃうし…クラスのクリスマスパーティでおお泣き!
楽しい空気があたしのせいで、暗くなっちゃって、もう最低っ」

あはは、と乾いた笑い声をあげるあたし

なんでこんなことを片岡君に話してるのだろう

まるで靴を履けない言い訳がそこにあるみたいに、ぺらぺらと自分の情けなさを曝け出して

馬鹿みたい

片岡君に言っても仕方ないことじゃない

片岡君だって、困るよね

こんな暴露話されたってねえ