「…すみません。私、コーヒーが苦手で…」


「そうなの?


でも、そこの紅茶も人気なんだよー?紅茶は好きでしょ?こないだの飲み会で紅茶頼もうとしてたじゃん」


う…しまった!


もっと突っ込んだ断り方をするべきだった。


それに、居酒屋なのに 紅茶を頼んで断られたっていうエピソードまで律儀に覚えてやがる。いくら酔っ払ってたとは言え、あんなことまで引っ張り出されたら行くしかないじゃん…



「あはは…。じゃあ、一杯だけ…」


「そう!良かったー!じゃあ、仕事あがったら駐車場に集合ね!車の方が断然早いし」



にこーっと笑う安本さんは、本当に可愛くて。30代の男の人に向ける言葉じゃないけど

こんな顔されたら女の人は断れないんじゃないかなぁ…


なんて 頭の隅で思った。



っていうか、安本さん 既婚者だったりとか 彼女とか居ないのかな。




「プライベートな事ですけど、安本先生はあたしなんかと喫茶店に行ったりして大丈夫なんですか?彼女とか、奥さんとか…」



思った事をそのまま聞いてしまうあたし。


それを安本さんは笑ってすぐに答える。


「居たらこんな事、とてもじゃないけどできないよー。独り身って束縛がなくて楽だから。

こうやって若い子と話せるのって特権でしょ」


ふふん。


爽やかに仰ってますけど、それがプレーボーイだと連想させることに気づいてるのかな?