「後でコーヒーくらいは奢ってくれるでしょう?」
なんだ、そんな事か。
「それくらいなら良いですよ~!」
ホッと胸を撫で下ろしたあたしは、軽い返事をして、事務室へと花を取りに向かった。
―――――――――――――――――
「それでは――――新入生の入場です―――」
式の本当に直前。そのアナウンスが流れるほんの少し前に やっとあたしは自分の席に着くことができた。
荒い息が聞かれるのを心配したけれど、それは拍手によって見事に相殺される。
あーあ…新しい先生って雑用を任せやすいのかな。というか、断れない性格がバレてるのか?
最近、本当に忙し過ぎて 今日の名簿も覚えきれてないんだよねー。
一クラスしか目を通してないし…。最悪。
朝早くから呼び出されたせいで、せっかく見られると思った大和の制服姿も見れず
結局どこに通うのか教えてもらってない!!
はぁぁ…
大和に会いたいよ…。
立ちながら、拍手をしながら 周りに合わせて着席しながら。
そんな事ばかりを考えていたせいか、「田原 大和」と、聞こえた気がした。
…???
夢? っていうか、幻聴か。