おでこをさすりながら恨めしそうにお兄ちゃんを睨む。


「……ぶっさいくな顔」


「あーっ、ひどい! お兄ちゃんのせいなのに」


「うそうそ。りぃは可愛いよ。誰よりもな」



お兄ちゃんはあたしの頭をくしゃくしゃ撫でると、春菜さんのそばへと向かった。

お兄ちゃんは平気でそんなことを言う。


大切だよ。

可愛いよ。

誰にも渡さない。



だからお兄ちゃんはいつまでたってもシスコンって言われるんだよ。


…なんていえるはずがない。


だってその言動の一つ一つがあたしにとってとても貴重で、何よりも特別なんだと思うことができるから。



「もう、凌ったら本当理沙ちゃんが可愛くてたまらないのね」



春菜さんが作る夕飯はおいしかった。

箸も進み、それと同時に会話も弾んだころ、春菜さんは微笑みながらそういった。


「そうだな。りぃは俺の大事な妹だからな」

「凌はいつまでたっても妹離れできないからな」


お兄ちゃんとお父さんが言う。

そのたびにあたしの胸は鋭く痛む。


「昔から家を空けることが多かったから、凌がずっと理沙の面倒を見ていたのよね。だから親以上に過保護なところがあるのよ」


お母さんはきっと理沙が結婚とかなったら、凌は血相を変えるだろうねとからかう。


……でもそれはあくまで妹だからだ。

妹だから。


だから大切にしてくれるんだ。


だから余計に痛いんだ。