「いらっしゃい。お2人で? 宿泊はするのかい?」
「はい。とりあえずは2人で。宿泊も用が今日中に済むかどうかも分からないので、未定です」
「そうかい。じゃあとりあえず、2室用意しておくよ。
そこのお嬢ちゃんと同じ部屋って訳にもいかないだろう?」


カンゾウさんと宿屋のおばさんのやり取りを聞きながら、

宿の中をぐるりと見渡してみた。思えば宿屋は知っていても利用する事はなかったから、

これが初めての事。不謹慎かもしれないけれど、ドキドキわくわくな気分だ。

天井は高く、絶対にレーノの家にならありそうなシャンデリア。

見た事もない植物もあったりとまるで異空間。

ただ唯一私を落ち着かせてくれるのは木の匂いだけだった。家を思い出すから。


「トキイロさん、一応お休みになる部屋だけは確保出来ました。
お食事は部屋に運んでくれるようですので、部屋へまずは行きましょうか」