随分長い沈黙が続いた。



店に客が誰も来ていないせいで、レジの前の結衣さんにも全部聞こえていた。





「なんだ・・・そうなんだ・・・・・・私こそごめんなさい・・・・・・」



モミジのエプロンに涙がポタポタと落ちて、染みこんでゆくのが見えた。



その時、結衣さんが着替え室のドアを開けた。


「モミジ、わかってあげて。直は相当悩んでたんだ。あんたを傷つけたくないって!」


結衣さんも知っていたことに、モミジはもっと涙を流した。


でも、笑ってくれたんだ。



「良かった…大好きな先生の彼女が直さんで良かった。噂が間違っていて良かったです。」




無理して作った笑顔が痛々しくて、私も結衣さんも泣けてきた。



「時々話してくれた彼氏の話って、アラカズのことだったんですか?じゃあ、ラブラブなんですね。安心しました。」




その日以来、モミジはバイトに来なくなった。


それが彼女の優しさだと思った。





本当は私が辞めるべきだったんじゃないか…

モミジは何も悪くない。



ずっと言えなかった私が悪かったのに。