人の噂は恐ろしい。


私を軽いと言う人がいるなら、会ってみたい。

こんなにも先生一筋で先生しか見えていないのに…



「あのね…実は、話があって。」



帰り支度をしていた結衣さんが代わりに店に入ってくれて、私とモミジは着替え室で話をすることになった。



何も知らないモミジは少し震える私の手を見て、不思議そうな顔をしていた。



「モミジ、本当にごめん!私、本当のことが言えなくて…」



パン屋さん独特のイースト菌の匂いと、生温かい空気。


手の震えが止まらなかった。




「先生と……付き合ってるんだ。」



何が何だかわからない表情でモミジは私を見つめていた。



「ごめんね…モミジの好きな新垣先生の彼女って私なんだ……」