『彼女いるって噂もあるんですけど、私はいないと思います。最近みんなでアラカズって呼んでるんです。新垣和人って名前だから!』
昨日、先生から聞いたことを、先生の生徒から聞く…
胸の奥が、ズキン…って痛む。
「アラカズなんて呼ぶ生徒がいて、かっこわりぃよ。」
先生はそう言いながら、恥ずかしそうに笑っていた。
それを聞いて、すぐに感じたこと。
先生をそう呼ぶ生徒は先生を好きなんじゃないかってこと。
私の出身高校を知らない彼女が
私に先生のことを話すのは仕方のないこと。
彼女の名前はモミジちゃん。
「モミジちゃん、私…実は同じ高校なんだよ!」
早く本当のことを言わないと…
そう思いながら、先生の生徒だったことを言った。
モミジは私の腕を掴んで目をキラキラと輝かせた。
「直さん!卒業アルバム見せてください!!」
言えなかった。
彼氏なんだ・・・って。
言えるわけないよ。
黙ってることはモミジちゃんを裏切ること、嘘をついてるってこと…
でも、言えなかった。
あんな嬉しそうなモミジちゃんに言えないよ。
わかるから。
すごくすごく気持ちがわかって、胸の奥が苦しいよ。