「お父さん、その時計覚えてる?」
私はお父さんの左腕の時計を指差した。
それは、去年の誕生日にお姉ちゃんと先生と私で選んだプレゼントだった。
すごく喜んで、毎日つけてくれてる時計。
お父さんはその時計をじっと見つめた。
覚えてないよね…
ここ2,3年の記憶が抜けてしまっているんだと思う。
「これは・・・・・・大事な時計だよな。みんながくれた時計・・・」
涙がこぼれちゃうよ。
お父さん…
数年の記憶が消えているのに、
半年前の時計のことを覚えていた。
それだけ、嬉しかったんだね。
それだけ、大事な時計だったんだ。