「大丈夫ですよ。寝ていてください。僕は外にいますので何かあれば声かけてください。」
どうしてそんな笑顔が保てるんだろう。
本当はすごく悲しいよね。
たくさんの思い出・・・全部消えちゃってること。
振り向いた私に先生は2度頷いて、笑顔で親指を立てた。
静かな病室の中で自分の心臓の音だけが聞こえる。
心の中がぐちゃぐちゃでモヤモヤで、どうしていいかわからない。
お父さんは生きている。
命に別状はなさそうだし、元気に話すこともできる。
大きな病気でお父さんの命が危ないわけじゃないし、
お父さんが苦しんでいるわけでもない。
でも、何とも言えない不安と恐怖で…
また息苦しくなる。
「お母さんも外にいるから・・・」
お母さんは私の肩に手を乗せた。
親子の愛の力に期待して2人きりにしてくれたの?