「じゃ、出発。直は夜遅いから寝てなさい。」
先生の教師口調。
私の頭の上にポンっと手を乗せて、車を発進させた。
やっと笑顔を見せてくれた先生は、笑顔のない私の頬に触れた。
「直、大丈夫だから。」
先生も興奮しているようで、深呼吸ばかりしていた。
私は息をしてもしても苦しくて
心臓のドキドキが怖くなった。
最初に止まった信号で、先生は私の手を握った。
「大丈夫か?無理すんな。泣いていいから…」
先生の左手に包まれたと同時に涙が溢れた。
怖いよ
嫌だよ
お父さん大丈夫なのかな…
早くそばに行きたい。
お母さんを抱きしめてあげたいよ。